劇場版マクロスF

主に後編の感想を。
全体通してシェリルの生き様が特に印象的でした。自分の身を犠牲にしてでも大切な存在かつライバルとも言える相手を助けようとしますし。
要塞に突っ込んでいったブレラの戦いぶりが格好よかったです!
今回ブレラの活躍シーンが多くて感慨深い。
アルトも人間とバジュラの狭間で悩み、迷い、重傷を負う。
ああ……主人公している。
リンゴでバルキリー作って「キーン」と言いながら動かす。
……どこの子供だ。
ものすごい美形、天才役者、有望パイロット、料理洗濯その他家事万能と才能の塊みたいな人間なのに、本人に自覚がなく、おごることもなく、かなり子供っぽい部分がある。
このバランスが好きです。
ゴスロリが似合いすぎていて笑いました。
「このゴスロリのキャラえらく美じ……おいまさか!」
そのまさかでした。
ここまで女装、しかもゴスロリが似合う主人公って珍しい。
あんな動きにくそうなスカートで華麗なアクションを繰り広げるアルトさん男前。
「何故アルトはよりによって女装したんだ?」
という疑問が浮かぶと同時に、
「男か女か自分が誰なのかわからなくなる(それが怖い)と言っていたような……? トラウマを乗り越えた、これが愛の力か」
と呟くという忙しい結果に。
あの服装ならば油断させやすく、道具も仕込みやすいという理由も大きいのでしょう。

シェリルやオズマがいなくなってからのアルトの格好よさが加速する。
ミシェルの「もうお前を姫とは呼べないな」という台詞が熱い。
放課後オーバーフロウのイントロが流れ、戦闘に入るところで一気に盛り上がりました。
アルトとシェリルの回想はどちらも破壊力抜群です。
シェリルの「空を飛んでいるようだった」という言葉が、アルトの空への想いにもつながっているのでしょうか。
花束の差し出し方といい、「歌で銀河を震わせてみせる!」という宣言といい、小さいシェリルの可愛さはもうたまらない。小さいアルトも負けじとキラキラしていて可愛い。
瀕死になっていてもシェリルの歌を響かせようとするグレイスに感動しました。
それに応じるシェリルも覚悟完了。
「私が死んでも歌は死なない!」
「生きるために歌う」→「歌うために生きる」→「私が死んでも歌は死なない」という変遷に。
過去や病気や裏切りなど悲劇的な設定が多いシェリルは、それらが上手く描写されていると思います。
出しきれなかったり重すぎたりせずちょうどよかった。
魅力的に映るのは、限界まで自分で立ち向かおうとするから。
容赦ない突き落とされ方とそこからの復活は不死鳥のごとし。
瓦礫の中、魂を振り絞って歌う『ノーザンクロス』が強烈すぎる。
歌自体は短く、華やかな衣装や映像、大がかりな舞台もない。
それなのに、瓦礫を踏みしめて歌う姿は力強く、心を打つ。これが歌姫だと思わせる力があります。

TV版では物足りなかったライバル対決が大画面でガッツリ見られて大興奮。
お互いの生き方や信念をぶつけ合い、見つめ直す様が見たいと思っていたので、ブレラを目覚めさせようと叫ぶアルトに満足。
ブレラの洗脳を解く方法も、TV版だと被弾の衝撃で、「叩いたら直る家電みたいだ」と思いましたが、劇場版は「いつの間に」感がありませんでした。
歌の力で本当に大切な存在を思い出す!
自らインプラントを引っこ抜く!
血を流しながら元凶に特攻!
と熱かった。
「もうお前達の操り人形ではない!」
という叫びも最高に燃えた。
劇場版ではもう一人の主人公じゃないかというくらいインパクトがあります。
彼が帰還し、穏やかな日々を過ごすことを願ってやみません。
操られていたといっても許されるのかという問題がありますが、彼の場合、体質上抵抗は極めて困難。
TV版でも劇場版でもこちらを攻撃してきたのは仕方ないと思えます。TV版で洗脳が解けた後「償い」と口にしていて、己の行いに向き合う気持ちがありますから。

TV版だと、もう少しアルトの演じることへの悩みと解消を掘り下げてほしかったと思いましたが、見事に消化されました。
演じる=気持ちや痛みを悟ること、飛ぶこと=舞い、それらが一つになって異種族と理解し合えた。
役者としてのアルトも飛ぶアルトもどちらもアルトで、否定する必要はない。
危険だからとアルトが飛ぶのを止めたシェリルが、「真実の舞を!」とアルトが飛ぶことを願う。
歌えば命が危ないと知りながらも、アルトはシェリルが歌うことを受け入れる。
間違いなく、ここが彼らの見せ場。
ランカとシェリルのメドレーも素敵です。『ユニバーサル・バニー』や『オベリスク』も来るとは予想していなかった。
ランカを庇うシェリルに胸が熱くなったことを覚えています。咄嗟の行動でシェリルがどんなキャラが語られている。

シェリルに想いを告げるアルトの表情も、声も、すごく穏やかです。
「少し遅いかもしれないけど、俺はお前のこと愛して――」
私が行った時は「愛……」までしか聞き取れませんでした。
消えるアルト、悲痛な面持ちで手を伸ばし倒れるシェリル。
最後の「愛してる」が余韻を……。
シェリルの唇が動いたことやランカの台詞を解釈すれば、アルトが帰還しシェリルは目覚めたのでしょうね。
二人とも幸せになってほしいものです。
ブレラやグレイスも生きていると思いたい。
軽くでいいのでその後が追加されたらと言いたくなる話でした。

ラスト付近で「カワイ子ちゃん!」と叫んでノリノリだった人は別作品のキャラらしいですね。
妙に目立つと思ったら主人公だったとは。
バサラも出てほしかったと思いましたが、カオスになって余韻がぶっ飛びそうです。

劇場版で印象に残った歌
『オベリスク』『ノーザンクロス』が前後の流れとも相まって凄まじく盛り上がります。
『オベリスク』のためにCDが欲しくなりました。
後編のシェリルの星間飛行やノーザンクロスも入っていればなあ……。

TV版と比較しての各キャラ
どのキャラも評価がグンと上がりました。
主人公側はもちろん、悪役側も小物っぽさが消えていい感じです。
アルト:TV版では優しい、忍耐強いという印象が真っ先にきました。超美形で才能に恵まれているのに全然鼻にかけず、子供っぽい部分も見せる。
劇場版では主人公としてきっちり見せ場がある。格好いいし男らしい。
バジュラの痛みを理解し、架け橋となった。
彼のバジュラに対する考えと変化が理解・共感しやすく、駆け足に感じられた共闘共存が熱かったです。
「バジュラは敵!」から「バジュラにも心が?」、そして「歌を届ける!」へ。
歌と彼の舞があって分かり合えたんだと思います。
シェリルへの想いを見せるシーンに微笑ましくなったり感動したりしました。
シェリル:TV版でも十分すぎるくらい輝いていたのに、劇場版ではますます輝き、残りわずかな命を燃やしつくすかのように生き抜いた。
監獄に叩きこまれようと吐血しようと最後まで歌い抜く彼女はトップクラスに身体を張ってる。
乱暴に突き飛ばされるくらいは序の口で病気でフラフラ、スパイ容疑で逮捕され歌姫の地位も信頼も失い、監獄で吐血し病気で死ぬのが先か死刑にされるのが先かわからない状況に。
さすがに精神的に弱ったところを見せるも立ち直り、妹のような少女を我が身を犠牲にして庇い生身で宇宙空間に放り出され、限界まで歌い命を燃やしつくしてぶっ倒れる。
その生き様は壮絶の一言。
前編のタイトルにイツワリノウタヒメとあり、三島からもそう言われましたが、彼女は本物……真実の歌姫だと思います。
ブレラ:TV版では強くてカッコいい割に影が薄いな……くらいのイメージでしたが、劇場版では「もう一人の主人公か!?」と言いたくなるほど見せ場があった。
「およしなさい」は矢三郎かと思った。
グレイス:目的のためならば手段を問わぬ冷酷さとシェリルへの情、彼女らの強い絆を感じた。最初は利用するために拾っただけの少女が、生かしたい・望みを叶えたいと思う存在にまでなったことを、グレイスはどう思ったのでしょうか。
ランカ:TV版で引っかかった、理解できなかった言動がなくなり好感が持てるキャラに。恋愛要素もちょうどいいぐらいでした。
オズマ:TV版でのアルトへの説教はあまり共感できませんでしたが、今回は心に響きました。
「演じてないヤツなんていないんだよ!」は素直に頷けました。
TV版のアルトの悩みにも答えた形になっていると思います。
三島:野心家らしい有能さと冷酷さを感じさせるいい悪役に。写真立てを倒す演出も印象深い。三島やグレイスは、TV版では前者は小物、後者はいつの間にか諸悪の根源扱いで風格不足に感じられたので、容赦のなさや敵の手を読み対処するのが素敵です。
ミシェル:アルトに対し「死ぬなよ」と言った時、「お前が言うな」とツッコんだ方は多いと思われます。
クランもそうですが、生き延びることができて良かった。

全体として、TV版で「もっとこうだったら」な部分や引っかかった点が解消されていました。
特に黒幕ギャラクシーとの対決が明確になり、バジュラとわかりあう過程が共感しやすくなっていました。

アルトが帰還しシェリルが目覚めるまでを見たいです。
私の中ではバサラと出会って帰る場面が浮かんでいます。
フォールドし、クイーンとともに消えたアルトの意識が薄れ……。
「すまない……シェリル。帰るのが、遅く――」
「俺の歌を聴けえぇ!」
「っ!?」
という感じで。
アルトとシェリルが青空の下で笑い合っているシーンがあればなぁと思います。

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