送電塔のミメイ

しばらく前にプレイしたフリーゲームの感想です。

廃墟離島という小さな島にコゴリ鬼を退治しにきた少女、ミメイと自称鬼を喰う青年の夜刀が主人公。島との人々との交流やコゴリ鬼との戦いを経て、次第に人物の過去や正体が明かされていきます。
サウンドノベル形式で選択肢はありません。続きが気になって、特に後半どんどん読み進めてしまいました。

世界観や設定
同じ作者様の別作品『True Remembrance』と違って和の雰囲気です。昭和初期の日本が近いでしょうか。
コゴリ鬼など固有の存在がちょうどいい具合に登場して独特の世界が形作られています。

文章
淡々とした調子で、語る人物とよく合っています。基本的に冷静なミメイと夜刀の二人の視点から交代で描かれるため、高いテンションだと違和感があったかもしれません。
すんなり読める文章の上手さです。話に引き込まれてぐいぐい読み進めていけます。

人物
ミメイや夜刀はもちろん、他の人物もしっかり描かれ掘り下げられます。主人公二人以外では総一郎や杏子が好きです。
「先識の能」で未来を見、傘を振るって戦うミメイはクールですが、ちょっとボケてもいます。
真面目で冷静、かつ素直で天然。
優しいを通り越してただ甘いのではなく、かといって強いだけの乾燥した性格でもない。
こういう魅力的なヒロインがいるとそれだけで嬉しい。ワクワクします。どうやってこんなヒロインが生み出されるんだろう。
可愛い女の子で特殊な能力があっても、考え方や戦い方は泥臭い。膂力が優れているわけではないのも好印象。
身の軽さや非力さを何とか補いながら立ち向かう姿には、折れそうな手足で巨大な武器を軽々と振り回す「華奢で剛力」とは異なった魅力があります。

夜刀は最初は「スカした嫌味な奴か」と思っていましたが、「何だ、いい奴じゃん」と思うように。
ミメイは彼を鬼だと思いこみ勝負しますが、何故か彼の未来だけは見ることができず、あっさり敗北。
夜刀も夜刀でミメイに「お前を喰う」などと発言します。……傍から聞くと何のことかわからない。
「いつかお前を討つ!」「俺はお前を喰う」と書くと『うしおととら』を連想します。
無表情で無愛想かと思いきや明るく笑う場面もあり、情に厚い。
主人公二名を見ていると、いい意味で頭をかきむしりたくなります。頬がゆるむというかなんというか。
恋愛要素には関心が薄く、誰が誰とくっつくかなどはあまり気にしない性質ですが……この二人は応援したくなります。
ミメイは夜刀の嫁。心おきなくそう言える。
本人たちも約束していましたし。

総一郎はいい性格をしている。
第一話での見せ場には素直に格好いいと思いました。
一言で言うと、燃えた。
登場タイミングが最高によかった。
おまえはヒュンケルか。
しかし見はからっていた感は無く自然でした。島中を必死で探し回ってやっと駆けつけたわけですから。
備わっていて当然の力が無いと思いこんで逃げ出したり、大抵のことはどうでもいいと思っていたのにどうでもよくないものがあると気づいて戻ってきたり、普段の飄々とした態度とは裏腹に不器用な男。

他にも杏子やハナなど島の人々には温かさを感じます。
だから、いつかミメイも……と思えます。

音楽
世界観に合っています。
戦闘シーンの音楽は怖ろしく格好いい。
シリアスな場面では悲しげな曲や寂しげな曲が話をいっそう盛り上げます。
個人的には鵺との戦いで流れる「闇の宴」が一番好きです。

ストーリー
全体の構成に惚れ惚れします。
序盤にちらりと話題に出てきた「こそどろ」や、何故持っているのが傘なのかという真っ先に浮かんだ疑問など、謎が明かされていきます。
結末を知ってから読むと「この台詞はこういう意味だったのか!」と目から鱗です。ですので二周目プレイもまた面白い。
途中辛い展開もありましたが、エンディングで救われた気分になるので満足です。
他にも語りたい部分がありますがあまりネタバレしたくないので……プレイしてほしい作品です。

にぎやかにド派手という感じではありませんが、生活感のある地に足のついた描写、穏やかな日常と緊迫した場面の緩急に引き込まれます。少しずつ蒔かれた種が後半活かされ、一気に加速しラストへ突き進む様が素晴らしい。
「本当にフリーゲームのクオリティか!?」と思いました。
シルフェイド幻想譚をプレイした時も思いましたが、追加エピソード等があれば買ってでも遊びたい作品です。

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