大神感想 最終章

別れの時

箱舟ヤマトに乗り込む前に相棒イッスンとの別れが……。
彼はもともと優れた絵の才能があり、それゆえ天道太子――神の威光を人々に知らしめ、信仰心を集めて神の力を高める伝道師に相応しいと期待されていた。
その分厳しく指導されることに嫌気がさして故郷を飛び出した。
そんな彼が大神アマテラスに同行するようになったのは、全ての筆業を目に焼き付けるため。
筆神を全部取り戻し、筆しらべを心に刻んだ今となっては一緒にいる必要はない。
神たるアマテラスやそれに匹敵する力の持ち主、常闇ノ皇との戦いなんて雲の上の話。住む世界が違いすぎる。
そう告げて去りゆくイッスン。彼を追いかけるアマテラスに抜刀し、「来るなってンだ!」と叫ぶ。
「天への道を歩む資格のある者しか乗り込むことが出来ないからねぇ。ユーのチケットなんて最初からないんだよ!」
というウシワカの言葉にムッとして乗り込もうとした彼は見えない壁に阻まれる。
乗り込む道が消え始めたためアマテラスは飛び乗り、イッスンは転落。
ウシワカのかける言葉が珍しく重い。
「人生何事も覚悟」
「結果はどうあれ、覚悟を決めるか決めないかで人生の価値は決まる。そんな価値ある人生を……ユーもたくさん見てきたはずだよ」

顔を上げたイッスンの胸に去来するのは、おそらく冒険の中で出会った人々の決意。
ヒミコ、オトヒメ、スサノオ、クシナダ、疾飛丸、忠拘ハヤブサ……他にも多くの人々が当てはまります。
とうとう扉が閉まり、ヤマトが飛び立つ。
イッスンとの別れを受け入れられず、振り返ったり身を乗り出したりするアマテラスが寂しげで見ていられない。

常闇
常闇ノ皇との決戦の場で明かされるウシワカの過去と悔恨。そしてアマテラスへの信頼。
胡散くさいし、うざいと思ったこともあったし、勝手に両島原北の大神降ろしを済ませた時は「おのれイズヒア!」と思ったけれど、彼も覚悟ある者だった。
月の民である彼を受け入れてくれた天神族。タカマガハラが魔物に襲われた時、彼らを逃すため月の文明で作られた箱舟ヤマトに乗り込ませた。
だが、その中には無数の妖怪が潜んでおり、逃げ場のない船内で天神族は次々と食い殺された。
知らなかったにせよ、オロチ来襲の際にアマテラスとともに先陣を切って戦ったにせよ、罪は消せない。
「多くの天神族を死に追いやり、下界をも汚したミーの罪は――どんな事をしてもリセット出来ないんだ!」
エンディングで流れる曲、『Reset』と対応する台詞。
月の民という出自にも関わらず信じてくれたアマテラスにウシワカは心を打たれ、彼もまたアマテラスを信じた。ずっと待ち続けてきた。
アマテラスを庇ったウシワカが退場し、アマテラス対常闇ノ皇。
今までの妖怪と違って無機質で、生命を蘇らせるアマテラスとは対極の存在です。
奪われた筆神を一体ずつ取り戻していきながら全ての能力を活用するので面白い。壁神様のカメラアングルは困りますが。
月を描けばスサノオが、霧隠を使えばヒミコが、凍らせればオキクルミの姿と助力が見られます。
みんなと一緒に戦っている……そう感じられます。

常闇ノ皇第四形態を倒したアマテラスはいつものように勝利の勝鬨を上げようとする……が、勝利を喜ぶイッスンの姿は幻だった。
寂しげな咆哮が悲しい。
神でも、強大な力を持っていても、孤独を感じないなどということはないんだと思いました。
勝ったと思われた直後、アマテラスは常闇ノ皇の手に掴まれ全ての力を奪われます。
神の力を示す隈取りや神器も消え、ただの狼の姿になってしまった。
絶体絶命の窮地に届いたのは――相棒イッスンの声でした。

『ありがとう』
アマテラスに語りかける声に続いて聞こえてきたのは旅の中で出会ってきた者達の声。
ツバキから始まり、サザンカ、ムシカイ、フセ姫、タマヤ、竹取翁、ミカン爺、ミカン婆、スズメの親分と子分、クシナダ、スサノオ、オキクルミ、オトヒメ、イッシャク……。
「お姉ちゃん……ワン子どこかで泣いてるの?」
「私が神さまなんかいないって言ったこと、怒ったの?」
神を信じてきた少女と、神などいないと思っていたけれど考えを改めた娘。
ハヤブサが心配していると告げるムシカイ。
自分たちの力だけでも村は守っていけるが、八犬士が会いたがっているため元気な姿を見せるよう願うフセ姫。
隠れていると言うなら一発怒デカイのをブチ上げて目を覚ましてやる、と意気込むタマヤ。
竹細工をお供えしていれば真っ暗にならずに済んだのかと問いかける竹取翁。
「あのいたずら者め。まさか本物の白野威さまの生まれ変わりじゃったとは!」
「おやまぁ……随分桜餅の好きな神さまだったよ。こんなに真っ暗になっちまったのはお腹でも空かせているからかねぇ?」
アマテラスに舞を披露したり食べ物を振るまったりしたミカン夫妻。
よく桜餅をもらいに行っていたことが思い出されます。
アマテラスの身を案じるクシナダに対し、スサノオは何があろうと簡単にはへこたれないと断言し、大笑する。なぜなら、このスサノオの兄弟なのだから。
「一つの道を究めようとすれば必ず成功と失敗を問われる。しかし……その道を歩むことにこそ掛け替えのない価値があるのだ」
「お前も自分の力を信じて――ただ只管己の道を歩むがいい!」

アマテラスや白野威の姿に己のあるべき姿を取り戻した英雄オキクルミ。
オトヒメはイッスンが覚悟を決めたことを悟る。
イッシャクは孫が己をも超える最高の相棒、天道太子になったと認める。
「人々の心に感謝の気持ちを呼び覚ますお天道さまの使者」という表現がぴったりです。
彼らが見ているのは天道太子として生きる覚悟を決めたイッスンの絵。
台詞が無い人々や画面に登場していない人物も確かに見ていると感じられる。
スサノオ、クシナダ、ヒミコ、オトヒメ、ワダツミ……旅の中で出会った人々の生き様が彼を動かした。

ここでイッスンの口上が。
「ついさっきまでお空でニコニコ笑ってたってェのに、どういうワケだかヘソを曲げちまって、お陰でこの世は真っ暗闇だァ」
「これじゃ表で気持ちよく昼寝も出来ないし、稲穂だって萎れちまわァ。草や花は片っ端から枯れちまって、洗濯物も乾かねェ。妖怪どもは大手を振ってそこら中を歩き回り、お祭り騒ぎときたモンだィ」
「そんな陰気な世の中は――誰も望んじゃいないだろォ?」

これっぽっちも否定できない。
太陽はあらゆる生物の源だと大魔王様も言っています。生きとし生ける者には太陽が必要なのだ、という言葉も思い出しました。
「ここは一つ、みんなで力を合わせて大神サマのご機嫌取りと行かねェか?」
ちょいと手を合わせて心の中で感謝の気持ちを捧げるだけでいい。
「みんなの心が届いたらお天道サマも機嫌を直して顔を出し、浮世をあまねく照らしてくれらァ!」
「だって大神アマテラスさまは――ポカポカ陽気がご身上のお調子者なんだからなァ!」
アマテラスはあたたかいやつですから。
「聞こえてンなら返事しろィ、この毛むくじゃらァ!」
皆の祈りが光となり、アマテラスの体に吸い込まれていく。
光が弾けると、そこにあったのは全盛期の力を取り戻した大神の姿でした。

縋るだけの神頼みではなく、感謝する心が闇の中のアマテラスを支える柱となった。
『ありがとう』という曲名が端的に表しています。
アマテラスの力の源は、人々の神への感謝の気持ちや信仰心。
強化が戦闘の経験値ではなく幸玉によって行われるから説得力があります。
ただ敵を倒して強くなるのだったらここまで感動しなかったでしょう。
動物に餌をやったり、草木を蘇らせたり、人々の悩みを解消したり、幸せを生み出し深い絆を結んでいった。
だからイッスンの行動によって全盛期の力を取り戻すことができた。
……へっ、何で目と鼻から水なんか出やがるんだ。ヒムじゃあるまいし。
この場面は何度も見たから大丈夫だろうと高をくくっていたら轟沈。
音消さないと文字打つ手が止まる。
とうとう最後の戦いが始まります。

太陽は昇る
流れる音楽が神がかっている。
曲名は『太陽は昇る』。バーン様の台詞と微笑を思い出しました。
負ける気がしない。
戦闘開始と同時に常闇ノ皇の力によってアマテラスが闇に包まれます。
こんな時使う筆業は決まっている。
『闇が全てを覆うとも忘れてはならぬ』
『闇を祓う光明の暖かき温もりを』
『祈りは力なり』
『力は祈りなり』
最終局面で最も効果を発揮するのが最初から備わっていた技というのがうますぎる。
しばらく光明を使わずに戦っているとイッスンの助言が聞けます。
「オイラたちの気持ち、きっとアマ公に届いてらァ。アイツなら……どんな暗闇の中だってお天道サマみてェにニッコニコよォ!」
アマテラスなら……アマテラスならどんな深い闇も照らしてくれる!
最高の相棒もいるのですから。

常闇ノ皇に勝利したアマテラスは生きていたウシワカとタカマガハラへ。
別れの挨拶はできませんでしたが、いずれイッスンと再会できるはず。
タカマガハラの世直しが済んだら空が闇に閉ざされた世界にも来てほしいものです。
太陽を渇望する御方に遊んでいただきたいゲームです。

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